建物コレクション 現代住宅D〜E

前回に引き続いて残りふたつを紹介する。
左がD(陸屋根の家」で、1960年代後期から70年代中期にかけて流行った建物である。
本体は普通の木造住宅なのだが、屋根に勾配をつけず平面にしているところが特徴となっている。
陸屋根というのは、こうした傾斜がついていない屋根のことなのだが、おそらく防水には気を遣わなければなるまい。
マンションの保守で最も費用がかかり障害が発生しやすいのも屋上防水で、10年に1度くらいの防水工事に1千万円はかかる。
鉄筋コンクリートでも厄介なので、木造ならどのようなことになるのだろうか。
そのようなわけで、以後木造家屋の陸屋根はあまり見られなくなった。
見られなくなったということは、普通の屋根の家よりも早く取り壊されているということかもしれない。
このあたりの家は、ただ屋根の形が違うだけではなく、玄関あたりからも70年代モダン様式が採り入れられていた。
木目の化粧合板を多用したり、いくらか閉鎖的で暗めの室内を照明で工夫するなど、それまでの家とは趣を異にしていたようである。
しかもまだフローリング材が普及していなかったので、床は天然木が多かったあたりなど、今の家屋よりも重厚な雰囲気だった。
車庫の屋根の下のトラスなど、アルミ支柱が普及する前によく見られたものだった。
無改造だが、全面塗装で仕上げてある。
右がE(出窓のある洋風の家)で、80年代頃という設定らしい。
コロニアルスタイルというのはそれ以前からあったので、70年代でもおかしくはない。
全体の雰囲気からゆくと、たしかに70年代でも後期くらいの設計に見えなくもない。
このあたりはどこかで切って分けるのも難しいが、うちの設定年代では最新の住宅ということになりそうだ。
輸入住宅というコンセプトだということだが、たしかにこのような輸入住宅が入ってきたのは、バブル期の少し前くらいだったかもしれない。
全体的に大柄な建物で、東急田園都市線の沿線に広がる新興住宅地などに似合いそうな気もする。
出窓の桟のモールドは両脇も正面から抜いているので、近くで見るといささか奇妙だったりする。
やはり改造はしていないが、全面塗装はしてある。