建物コレクション 漁港A〜B

そろそろ建コレも何でもありという域に入ってきたのが、この漁港あたりからであろう。
まさに「よくぞやった」と言いたいところで、企画立案にはずいぶん知恵を絞ったことと推測される。
とにかく、何でもよいから建造物を考えて製品化しなければならないという、追い詰められた状況にあるのかもしれない。
ただし、まだプラスチック製のストラクチャーでは手つかずのものも多いので、当分はやったもの勝ちの状況は続きそうだ。
鉄道模型のストラクチャーという束縛があるわけでもないので、何でも出せるという自由度はある。
この漁港にしても、そうそう線路の近くにあるものではないし、あったとしてもレイアウトの板に収まるほどの近さは少ないと思われる。
左が漁港A(水揚げ場・漁協事務所)で、鉄筋コンクリートの堂々とした建物である。
最近ではあまり見られなくなってきたが1970年代の建築で、今でも残っていたら、潮風でかなり痛みも激しいのではないだろうか。
当時としてはしゃれた波形の屋根など、誰がどう提案してどのように受け入れられたのか、いささか興味深いところでもある。
2階が事務所で、1階が水揚場のほかに簡単な現場詰所兼冷凍庫の建物が収まっている。
これだけの建物を持っているところというと、比較的大きな漁港になるはずなので、周囲の面積もそれなりに必要となってくるだろう。
付属品として灯標と防波堤があるが、全部使って作るとなると、海側にもだいぶ広げないとなるまい。
メーカーの作例では、なぜか岸壁の係船柱を前後逆に付けるという失敗をしていたが、鉄道は詳しくても船関係は苦手なようである。
そのあたりの細かいところは、手を広げすぎるとどうしても行き届かないのかもしれない。
あとは、赤い灯標を岸から見て右に付けていたが、右は白ではなかっただろうか。
とりたてて改造はしておらず全面塗装だけだが、岸壁の部分は切り離して自由に配置できるようにしてある。
右がB(魚市場・食品加工場)で、鉄筋コンクリート建てにカマボコ屋根の大きな建物である。
魚市場といっても、競りは普通水揚げしたところで行うはずだから、このような建物の中でやるのだろうか。
むしろ、干物などの加工品や養殖の水産物の卸しなどをするところなのかもしれない。
扉のない方の半分は、もしかすると2階まで吹き抜けになっており、残りの半分が2階建てになっているようにも思える。
内部にも階段があって、2階へはそちらから上がるという構造も考えられる。
付属品は小型の木製桟橋だが、出来はなかなかよい。
これも岸壁のある地面から離して、建物だけをほぼ無改造で組み全面塗装した。
外側はそのままだが、建物の中に仕切を付けて、単なるガランドウではなくしてある。
そういえば、図面通りに組むとシャッターが上下逆に見えるので、裏側の取付リブを削って巻上箱とおぼしきものが上になるように加工した。
これで自由に配置できるようになったが、本来は隣り合わせに並べるようになっていた。
建物前面の岸壁を接合すると、すぐ隣り合ってしまい、これだけの設備を持つ漁港にしてはあまりにもこまごましすぎる。
岸壁は岸壁で使って、建物はもっと広々と配置しないと不自然であろう。
ところで、Aの岸壁は建物の横にも回り込んであり、L型になっていたが、どこを参考にしたのかおかしな構造である。
しかも、作例ではL字の角に防波堤を付けているので、建物の横の岸壁は防波堤の外になってしまう。
何としても小さくまとめようと考えたのか知らないが、もっと自然に作ってあとは買った者の感性に任せればよいのではないだろうか。
大きなものを作ったのはよいが、それをあまりにもこぢんまりと配置しようとしたのが失敗なのかもしれない。
そのようなわけで、せっかくよくできたものなので、もっとおおらかに漁港を作るべく素材として大いに活用するべきであろう。