建物コレクション 温泉宿A〜C
単に旅館というのではなく温泉宿としたのは、たぶん7000円以上もする専用ジオラマベースを売りたかったからかもしれない。
ジオラマベースA〜温泉街の情景〜という、幅30cm奥行21cmの中央に、川が流れる山間部の温泉地を縮小したようなものである。
その面積にむりやり3軒を配置するわけで、完成させてみるとやはりオモチャっぽさは否めない。
どうも建物の配置そのものに無理があるようで、たぶんそのあたりが現実味を殺いでいると思われる。
もう少し大きければあるいはよかったのかもしれないが、それだと確実に10000円は超えるだろう。
ジオラマベースには、これにしか入っていない案内所と浴場の建物があるのだが、あとから別売された。
もちろんジオラマベースを買う気はないし、そもそも温泉宿として使うつもりもない。
温泉というと、だいたい線路からいくらか離れたところにあるので、レイアウトに温泉宿を組み込むのは難しいかもしれない。
箱根登山鉄道でさえ、線路の真横に温泉宿はなかったはずである。
だいたい温泉宿という大きさでもないし、これだと浴場は別棟になりそうなので、用途はほかに考えることにした。
左がA:望楼のある温泉宿ということだが、これは料理屋に使うつもりでいる。
大きな霊園の近くなどに、法事が終わって食事をするところがあるが、2階はそのような座敷ということでどうだろうか。
みんなが集まるまでは1階でくつろいで、揃ったところで2階に上がるような感じになりそうだ。
望楼はもちろん飾りで、この近辺のランドマークという役目も果たしていたりする。
そう考えれば、線路の近くにあってもおかしくはあるまい。
屋根以外は全塗装で仕上げたが、ハーフティンバー構造の成型が思ったよりもよくて、塗り分けにはそれほど苦労はなかった。
これはめずらしく、塗装に際して一旦外した窓ガラスの部品を再利用しているが、割れずに剥がれたからだったのだろう。
望楼は、□型の透明部品を中にはめ込むようになっていたが、納まりはとてもよい。
中央がB:鉄筋造りの温泉宿というが、どう見ても駅前旅館である。
田舎の急行停車駅のロータリーに面したあたりに建っていそうな雰囲気があり、狭いレイアウト上でもいろいろと置くところがありそうだ。
これはなかなか出来がよく、いかにも出張のサラリーマンが出入りしそうな建物という気がする。
なにも田舎だけではなく、大都市圏でもほんの少し郊外に出れば、駅周辺で見かけることもあることだろう。
新しそうに見えるが、1960年代後半から1970年代前半にかけての建築と言えそうだ。
元の色は黄土色に近かったが、灰色系に全面塗装した。
塔屋の屋号は印刷されており、そこの面だけはそのままだが、なぜかあとの3面は近い色で塗り直している。
右がC:木造3階建ての温泉宿で、一番温泉宿らしい。
しかも戦前のモダニズムを採り入れたような木造建築物は、何かとんでもなく凝った建物のようだが、元になったものとかあるのだろうか。
これが最も成型が細かいこともあって、一種の妖しい世界観を醸し出している。
『花園の迷宮』(山崎洋子)の遊郭というのは、きっとこんな感じだったのではないかと思わされる(映画では鉄筋コンクリート造りだったが)。
さすがに高度成長期以後の設定なので遊郭は作れないが、たとえば「○○新地」という駅の近くに、ひっそりと残っているというのもよいかもしれない。
これも全面塗装してあるが、最初の色からほとんど変わっていない色で塗ってみた。
どういうわけか窓の柵は塗らなかったのと、これも一旦外した窓ガラスを再利用している。
今回は全て無改造で仕上げているが、本来コレシリーズはそういうつもりだったのだが。