津川洋行・農家
まだ国産ストラクチャーが少ない時代に、ここぞとばかり積極的に出したときがあったようだ。
農家はトミックスの方が早かったかもしれないが、純日本的な風景を作りたかったのだろうか。
ところが、最初に出されたものは左のレジン製の完成品で、とにかく出来が悪かった。
中身も完全なレジンの固まりで、雑な塗装とあいまって、素人が即売会で売るジャンクに等しかった。
しかも軒がバラバラに割れた状態で入荷したので、全品即返品となった。
ちょうど店に入荷したときに居合わせたので、頼み込んでひとつだけ売ってもらった。
割れた軒は瞬間接着剤で補修して、全面塗装で仕上げてみると、なんとか見られるものにはなったようだ。
形自体はまとまりがよいので、奥の方の木陰に置いておくには、ちょうどよいのではないかと思われる。
これには、同じくレジン製の完成品の小さな蔵も付いていて、こちらは一部の塗装で仕上げた。
その後、名誉挽回のためかプラスチック製の完成品を出してきたのが右のものである。
大きさも基本的な外見もほとんど同じもので、もちろん出来は格段によい。
こちらは漆喰壁よりも木造部分が多く、白い部分はなんと紙を貼ってあった。
そのままにしておいたらだいぶ剥がれてしまったので、あとで塗装が必要になった。
完成品とはいえ、たしか屋根以外は成型色別の無塗装だったので、全面塗装はしてある。
あとは無改造だが、これならトミックス製に肩を並べられよう。
製造費が上がったからか、こちらには蔵は付いておらず、別売もされなかった。
キットもあったような話を聞いたこともあるが、現物は確認していない。
農村風景でもうひとつ、少し後になって水車小屋をプラスチック製の塗装済完成品で出した。
これはNゲージストラクチャーで唯一もので、時代に関わらず使い道はあると思われる。
蒸気機関車全盛期なら、実際に使っていたことだし、現代なら記念碑的に置いておくこともできよう。
郊外レストランの脇や親水公園、あるいは文化財として見せるなど、あって損なものでもない。
うちの年代なら、まだ田舎に取り壊されずに残っているというところだろうか。
屋根と水車はあとから塗装したが、建物の壁面はそのまま残しておいた。
当時キットも出されたという話もあったが、だいぶあとになってキットのみで再販されたようである。